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横田英史の読書コーナー

帰還兵はなぜ自殺するのか

デイヴィッド・フィンケル、古屋美登里・訳、亜紀書房

2015.7.1  12:18 pm

 タイトル通り重い内容のノンフィクション。イラク・アフガン戦争が米国社会に暗い影を落としていることが、本書を読むとよく分かる。戦争から生還した米国兵士200万人のうち50万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)やTBI(外傷性脳損傷)を患い、1年間に250人が自殺するという。本書は戦争がもたらした現実を、5人の兵士とその家族、上官、医療関係者などの苦悩と苦闘に焦点を当てることで浮き彫りにしている。今の時期、読んで損はない。
 本書で印象的なのは、繰り返し出てくる負傷した部下を背負って避難する兵士のシーンである。実にリアルで、戦争が兵士たちの心に深い傷跡を残す理由の一端が分かるような気がする。筆者はワシントンポスト紙の元記者で、ピュリツァー賞受賞をしたノンフィクション作家である。戦争の現実に目を開かされる好著であり、多くの方にお薦めしたい。

書籍情報

帰還兵はなぜ自殺するのか

デイヴィッド・フィンケル、古屋美登里・訳、亜紀書房、p.390、¥2484

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。