横田英史の読書コーナー
コミュ障~動物性を失った人類 正しく理解し能力を引き出す~
正高信男、ブルーバックス
2015.7.15 11:02 am
コミュニケーション障害(コミュ障)への理解を深めることができる書である。人の話をちゃんと聞けなかったり、会話が成立しなかったりといった、会社や学校の“困ったチャン”がこのところ増殖している。筆者は、いわゆるコミュ障の人とはどういう人なのか、コミュ障の人の持つ知られざる能力について分析・解説する。ちなみにコミュ障の歴史的偉人としてレオナルド・ダ・ヴィンチ、アインシュタイン、南方熊楠などがそうそうたるメンバーを挙げている。筆者は「ケータイを持ったサル」などの著書がある京都大学霊長類研究所教授。
STAP細胞事件から本書は始まる。STAP細胞事件の中心人物は、その行動パターンや思考パターンから判断してコミュ障と考えられると筆者は断じる。いったんこうと思い込むと、それに対する否定的な情報はいっさい眼中から消える。聞く耳持たないことこそがコミュ障の人の特徴の一つという。周囲を意図して騙す気はなかったが、自分を欺くことには長けていた。無自覚ゆえに悪意は臭ってこないので、つい巻き込まれる被害者が出てしまう。
彼女とは対極にある存在として「現代のベートベン」と言われた音楽家を取り上げる。彼は自分がこういうふうに振る舞えば、向こうはこう反応するだろう。だからこういうふうに操ろうと頭を使う。つまりコミュニケーションの達人であって、コミュ障とは真逆の人物である。
ちなみに生物学的に見ると、コミュ障の人は脳の動物的回路が働いていないという。つまり低次の脳機能に不全がある。通常、怒りに対する反応は笑顔よりも素早い。身を守るための本能だが、コミュ障の子どもは怒りの顔を見つけるのが苦手だという。
書籍情報
コミュ障~動物性を失った人類 正しく理解し能力を引き出す~
正高信男、ブルーバックス、p.176、¥864

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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