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横田英史の読書コーナー

歴史から理論を創造する方法:社会科学と歴史学を統合する

保城広至、勁草書房

2015.7.20  10:35 am

 東大生協の人文書籍のランキングで1位だったのを見て購入した書。さすがに高尚である。筆者は、自分の理論に都合のいい資料しか使わない社会学者と、狭い研究対象に埋没してしまう歴史家の間に横たわるギャップを明らかにするとともに、より優れた研究をするための方法論を提案している。「政治学・経済学・社会学・歴史学を学ぶ人、必見」と帯にある。大学生向けらしくて魅力的なテーマを扱った書だが、柔軟性が失われつつある脳みそでは付いていけない部分があったのも確か。
 帰納法や演繹法は、我々の社会を分析するのには不適切だと筆者は主張する。帰納法には「実験の不可能性」と、過剰な一般化を行う「帰納的飛躍」という問題がある。演繹法には前提が真であることと、結論が真であることを確かめる手段がない。そこで登場するのがアブダクションという推論方法。これは変則的な事実が観測された場合に、さまざまな仮説を設けて、その事実が生じた原因を探っていく手法である。本書では、分析するべき事例を記述的に明らかにし、その因果関係を解き明かす作業を具体的に紹介している。

書籍情報

歴史から理論を創造する方法:社会科学と歴史学を統合する

保城広至、勁草書房、p.182、¥2160

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。