横田英史の読書コーナー
慟哭の谷~北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件~
木村盛武、文春文庫
2015.9.14 10:14 am
北海道庁営林署の元林務官が、生存者や遺族などの証言を基に書いた日本最悪の獣害事件。すさまじいノンフィクションである。事件が起きたのは1915年12月。北海道苫前村三毛別の開拓地に現れた体重300kgを超える巨大なヒグマが住民を次々と惨殺した。死者は8人に及び、日本の獣害史上最悪だという。筆者は住民たちを襲った現場の状況を詳細に描いており、つい目を背けたくなるほどだ。ただし100年前の話とあって、マタギに射殺されたヒグマの写真を見られないのは残念である。
文庫化にあたって追加した3章「北千島の人食いヒグマ事件と私」「ヒグマとの遭遇」「ヒグマが人を襲うとき」は知的好奇心を満たしてくれ、役立ち感がある。筆者が北千島でヒグマと遭遇した体験、同僚が襲われた実体験、写真家の星野道夫さんが襲われた事件、福岡大のワンゲル部員が亡くなった事件などを紹介する。クマは獲物を食い尽くすまでその場を離れない、満腹でも襲うといった習性を紹介するとともに、火に近づかないといった通説の誤謬も正している。
書籍情報
慟哭の谷~北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件~
木村盛武、文春文庫、p.220、¥659
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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