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横田英史の読書コーナー

仁義なき宅配~ヤマトVS佐川 vs 日本郵便 vs アマゾン

横田増生、小学館

2015.11.4  12:30 pm

 筆者自らが現場を実体験するなど丹念な取材で、宅配ビジネスの裏側を明らかにしたノンフィクション。宅配の歴史、宅配ビジネスの仕組みやコスト構造、各社の企業戦略がよく分かる。佐川急便の下請け長距離便トラックに同乗したり、ヤマト運輸のセールス・ドライバーの助手を務めたり、ヤマト運輸の羽田クロノゲートに夜勤のバイトとして働いたりと、筆者の体を張った取材は読み応え十分である。「潜入ルポ アマゾン・ドット・コム」や「ユニクロ帝国の光と影」などの著者らしい書だ。
 宅急便(ヤマト運輸)と飛脚宅配便(佐川急便)、ゆうパック(日本郵便)の上位3社が激しいシェア争いを繰り広げる宅配便は、日本のECビジネスの屋台骨を支えるのは間違いない。とくに送料の無料化はEC市場の拡大に大きく寄与した。だが一方で、運賃のダンピング合戦が下請け依存の業界を疲弊させ、収入の減少や残業時間の改竄、サービス残業の常態化といった現状を生み出した。筆者は、宅配便の仕組みが制度疲労を起こしつつあり、維持することが難しくなっていると断じる。

書籍情報

仁義なき宅配~ヤマトVS佐川 vs 日本郵便 vs アマゾン

横田増生、小学館、p.316、¥1512

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。