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横田英史の読書コーナー

介護民俗学へようこそ～「すまいるほーむ」の物語～

六車由実、新潮社

2015.11.8 12:31 pm

　介護の現場で働く民俗学者の筆者が、静岡県沼津市のデイサービス施設「すまいるほーむ」における高齢者とのふれあいを綴った書。頑な態度だったり、殻に閉じこもりがちだった高齢者が、思い出の料理を作るといった行事やちょっとした会話をキッカケに打ち解けていく。認知症の高齢者との関わり、必ずやってくる永遠の別れ、家族や嫁との軋轢と和解など、デイサービス施設の日常を、筆者は柔らかな筆致で描いている。
　筆者は「聞き書き」という手法で、ホームの高齢者たちの人生を慎重に聞き取っていく。戦中・戦後を生きた高齢者たちは、それぞれに彩りのある人生を語る。挺身隊などの戦争体験や戦中の恋愛、昭和の暮らしなど、本書は忘れられようとしている日常生活の貴重な記録でもある。

書籍情報

介護民俗学へようこそ～「すまいるほーむ」の物語～

六車由実、新潮社、p.320、￥1620

横田英史（yokota@et-lab.biz）

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル（現日経BP社）に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT（現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会（JASA）理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

＊本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。