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横田英史の読書コーナー

がん幹細胞の謎にせまる~新時代の先端がん治療へ~

山崎裕人、ちくま新書

2015.11.14  12:34 pm

 ガンの正体は何か。どのように克服していくのか。そんな疑問にがん研究と治療の歴史を振り返ると同時に、再生医療など最新の研究に触れながら答えた書。筆者は、がんウイルス、がん遺伝子、がん幹細胞などの発見と治療法について解説し、「がんにはまだいくつかの未解明問題が存在するが、解決の糸口は見え始めている」と語る。日本人研究者の奮闘ぶりにも多くの紙面を割いている。もともとがん研究者だった筆者自身の話は余計だが、小説家であるだけにがん研究の歴史をドラマチックに描いており、全体として知的好奇心を満足させられる新書に仕上がっている。
 歴史の振り返りに多くのページを割いているために、実はタイトルの「がん幹細胞」に関する記述はあまり多くない。ページ数は少ないものの、がん幹細胞の挙動をドラマチックに描いており読み応え十分だ。がんゲノム計画を含む最後の50ページを読むだけでも価値がある。

書籍情報

がん幹細胞の謎にせまる~新時代の先端がん治療へ~

山崎裕人、ちくま新書、p.281、¥950

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。