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横田英史の読書コーナー

高度成長を引きずり出した男~サラリーマン社長・西山彌太郎の夢と決断~

伊丹敬之、PHP研究所

2015.11.25  5:56 pm

 政府の金融引き締め政策に逆らって大型製鉄所の建設を強行し、当時の一万田尚登 日銀総裁に「ペンペン草をはやしてやる」と言わしめた川崎製鉄(現在のJFEスチール)社長・西山彌太郎の評伝。エピソードがないのが特徴と言われた技術者出身のサラリーマン社長が、57歳での社長就任後に経営者として成長していく過程を詳細に追っている。高度成長期に至る時代の経営者の一面を知ることができる良書である。
 新卒で川崎重工に就職した評者にとって、もともと子会社だった川鉄は身近な存在だ。川鉄が飛躍するキッカケを作ったのが千葉と水島の両製鉄所ということや「ペンペン草」のエピソードは知っていたものの、積極果敢な投資を決断した西山についてはまったく知識がなかった。本書は学者が執筆した評伝だけに正確かつ詳細で勉強になる。もっとも、よく調べたと感心する一方で、人物像の描き方が通り一遍で面白みに欠ける面があるのは少し残念である。

書籍情報

高度成長を引きずり出した男~サラリーマン社長・西山彌太郎の夢と決断~

伊丹敬之、PHP研究所、p.317、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。