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横田英史の読書コーナー

誘拐

本田靖春、ちくま文庫

2016.2.26  1:04 pm

 元読売新聞記者でノンフィクションライターの本田靖春は、前々から読みたかった作家である。最近売れているという記事を朝日新聞で読んで、購入した文庫本。1963年に起きた「吉展ちゃん誘拐事件」を題材にしたノンフィクションで、期待に違わぬ出来である。東京オリンピックを前年に控えた、あの時代の雰囲気をよく伝えた書でもある。

 本書は発端、展開、捜査、アリバイ、自供、遺書という構成をとる。特徴的なのは細部にこだわった記述である。ジャーナリストは、ここまで真実に迫っていけるのかと感動する。犯人・小原保の故郷を訪れるなど生い立ちを丹念に追うとともに、被害者である村越家にも密着取材を敢行する。本書は平塚八兵衛の登場でクライマックスを迎える。アリバイを崩し、自供にいたるまでのやり取りは迫力満点である。

書籍情報

誘拐

本田靖春、ちくま文庫、p.368、¥864

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。