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横田英史の読書コーナー

前へ!:東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録

麻生幾、新潮文庫

2016.3.14  1:06 pm

 麻生幾は好きなノンフィクション作家だが、本書の存在は知らなかった。東日本大震災絡みで朝日新聞(だったと思う)に取り上げられていたのを見て購入。現場の動静や人間模様を詳細に伝えており、警察や防衛省、官庁系の情報に詳しい麻生らしい出来栄えである。筆者は事実を積み重ねることで、現場は強いのに上層部は危機に際して驚くほど無能という、日本社会に“ありがちな”構図を描き出している。一読の価値がある。

 本書で取り上げるのは、福島第1原発に駆けつけた陸上自衛隊、自衛隊の活動を支える補給部隊、ガレキで埋まった道路を開通させ橋を守った国土交通省東北地方整備局、さらに警視庁機動隊や災害派遣医療チームDMATなど、忘れられているヒーローたちの知られざる活動の数々を紹介する。一方で、自衛隊の隊員を襲うPTSD、うろたえる大臣のブザマな姿、現場知らずの官僚にも多くのページを割いている。

書籍情報

前へ!:東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録

麻生幾、新潮文庫、p.467、¥767

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。