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横田英史の読書コーナー

「全世界史」講義 ~ 古代・中世編:教養に効く!人類5000年史~

出口治明、新潮社

2016.4.3  10:38 am

 ライフネット生命保険の代表取締役会長で、読書家としても知られる出口治明が世界史を読み解いた書。2冊分冊の上巻は、紀元前3000年の文字の誕生から1400年のペストの流行までを扱う。同じ時期に世界各地で何が起こっていたかを横串にさして人類の歩みを紹介している。ポイントとなる出来事については簡潔な解説を添えており世界史の理解が進む。上下で700ページを超えるが読みやすいので、世界史を改めて整理したいとお考えの方にお薦めである。

 我々が学んだ世界史は、その後の研究成果によって書き換わっている。例えば、モンゴル史は中国で書かれた資料に基いて論じられてきた。しかしトルコ語やペルシア語で書かれた資料をソ連の学者が読むことで、従来とは異なるモンゴル史が明らかになったと言う。このほか筆者は、気候変動などの偶然の条件と、世の中の大きな流れと、高い能力をもった個人と、この三つの波長があったときに、大帝国ができると語る。ナポレオンやムハンマド(マホメット)を典型として取り上げる。

 このほか倭国が日本に生まれ変わった天武・持統の時代から奈良時代にかけての激動と変革は、白村江の敗戦に端を発しており、日本を産み落としたのは持統天皇をはじめとした意志ある女性たちの登場だったという指摘は興味深い。平城京には、白村江で滅びた百済の王族を始めとして、唐からの来訪者、唐を経由してきたペルシア人などが住み着き、人口の約7割が外国人だったいう説があるという。

書籍情報

「全世界史」講義 ~ <Ⅰ> 古代・中世編:教養に効く!人類5000年史~

出口治明、新潮社、p.384、¥1512

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。