横田英史の読書コーナー
カルチャロミクス~文化をビッグデータで計測する~
エレツ・エイデン、ジャン=バティースト・ミシェル、阪本 芳久・訳、草思社
2016.4.28 5:47 pm
Googleがスキャンした数百万冊の書籍に登場する単語やフレーズをビッグデータとして処理し、有名人や名声、悪名、言葉の盛衰を時系列で定量的に把握するシステム「Google Ngram Viewer」。このシステムを用いた7年間の研究「カルチャロミクス」を紹介した書である。名声を獲得する(失う)過程、英語の文法の変化、独裁政権による思想抑圧の手法を明らかにする。興味深い内容がぎっしり詰まっている。楽しく読めるお薦めの書である。
第1章でまず、「The United States」を単数で扱うか複数で扱うかの歴史的変化を取り上げる。当初は複数扱いが普通だったが、南北戦争以降になると単数扱いがぐっと増え、いまでは単数扱いが一般的になっているという。不規則動詞が規則化する過程は、放射性物質の半減期に似ているという話も興味深い。不規則動詞は使われる頻度が高まれば徐々に規則化する。使用頻度が分かれば、式を使って半減期を算出できるという。
Google Ngram Viewerを使えば、ナチスによる思想抑圧やスターリンの政敵に仕掛けた罠、北京政府の民主化弾圧を定量的に把握することもできる。例えばナチス。哲学と宗教関係の本の著者の知名度は、第三帝国が存続していた期間に4分の1に下がっている。政治を題材にした書籍の著者の知名度は2分の1になった。これに対して歴史家の知名度の低下は10%ほどに過ぎない。思想や理念に対してナチスが仕掛けたキャンペーンの概要が定量的に明らかにできるわけだ。
書籍情報
カルチャロミクス~文化をビッグデータで計測する~
エレツ・エイデン、ジャン=バティースト・ミシェル、阪本 芳久・訳、草思社、p.352、¥2376

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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