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横田英史の読書コーナー

ストラテジー・ルールズ ~ゲイツ、グローブ、ジョブズから学ぶ戦略的思考のガイドライン~

デイビッド・ヨッフィー、マイケル・クスマノ、児島修・訳、パブラボ

2016.5.4  9:55 am

 企業分析で定評のあるMITスローンスクールのディビッド・クスマノらが、ビル・ゲイツ、アッディ・グローブ、スティーブ・ジョブズの3人の経営手法を分析し、成功の秘訣を解明した書。3人の経営手法から五つの戦略ルール(本書を読んでほしいので詳細は触れない)を見出す。例えば、プラットフォームやエコシステムという考え方が重要だと説く。「リーダーや起業家は誰でも、心構えさえあれば3人と同様のスキルを身に付けることができる」と主張する。

 二人の著者は1987年からインタビューを開始し、取材は100件以上にのぼるという。インテルの内部文書を載せるなど議論の進め方には説得力がある。グローブ、ジョブズは鬼籍に入り、ゲイツも現役を引退してから久しい。あの時代の経営を振り返ることのできる好著である。ちなみに筆者は、次世代の経営者としてラリー・ペイジ、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、馬化騰(アリババ創設者)を挙げているところも興味深い。

 3人に共通するのは、最初に変化に気づいたわけではないが対応が迅速だった点。初めは製品を上手く開発できなかったが、信じる道を進む不屈の精神を持っていたことが成功につながった。例えばジョブスには無尽蔵のスタミナと粘り強さ、なにかを信じ続ける力、物事を最後まで成し遂げる頑固さと楽観主義が備わっていた。「共食いしなければ誰かに食われてしまう」とカニバリゼーションを恐れなかったことも成功の大きな要因となったという。

書籍情報

ストラテジー・ルールズ~ゲイツ、グローブ、ジョブズから学ぶ戦略的思考のガイドライン~

デイビッド・ヨッフィー、マイケル・クスマノ、児島修・訳、パブラボ、p.392、¥1836

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。