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横田英史の読書コーナー

日本会議の研究

菅野完、扶桑社新書

2016.5.26  9:54 am

 閣僚の80%超が名前を連ね、安倍政権を影で支える存在といわれる日本会議の成り立ちから現在の活動内容を紹介した書。著者が出版当日に、「事務総長名で出版差し止めの申し入れ書が版元の扶桑社に届いた」とツイートして話題を呼んだ。しばらく入手困難な状態が続きAmazonの古本に高値がついていたが、ここにきて増刷がかかって入手できるようになった。

 政治の右傾化、改憲運動、保守論壇、自民党政治家、ヘイトスピーチ、ネットウヨと日本会議との関連なども探っている。ネットメディアのハーバービジネスオンラインの記事をベースに書籍化したもので若干の粗さを感じるが、内容的には面白い。話題の書なので目を通すのも悪くないだろう。

 筆者は、日本会議が政治家に影響力を行使できる仕組みに迫っている。ポイントは地方での活動とマスメディアを使った宣伝活動である。日本会議の地方組織が地方議会の議員に働きかけ、地方議会で次々と請願書や意見書を採択させる。あたかも地方発の草の根運動であるかのように思わせる訳だ。あるいは改憲一万人集会のようなイベントを盛り立て、その結果が新聞に載り、それが政治家の目には「世論」として映るようになる。

 もっとも筆者によると、個々の構成員は高齢で考え方が非論理的で情念先行型だが、これを束ねる事務方が極めて優秀だという。事務方の優秀さが自民党の背中を押し、改憲の未知へ突き進ませているというのが筆者の見立てである。

書籍情報

日本会議の研究

菅野完、扶桑社新書、p.302、¥864

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。