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横田英史の読書コーナー

鉄客商売~JR九州大躍進の極意~

唐池恒二、PHP研究所

2016.6.8  10:05 am

 JR九州のアイデアマン唐池恒二会長が自ら執筆した書。釜山と福岡を結ぶ高速船ビートル、クルーズトレイン「ななつ星」、繁盛店「うまや」など次々に新機軸を打ち出し、JR九州を大躍進させ、今秋には上場を控えるまでになった足跡を、仕掛け人の視点から追っている。数々の試練を乗り越えて JR 九州を活性化していく過程は、実話ではなく小説のようで実に興味深い。洒脱な文体はつい引き込まれる。肩の凝らない読み物でお薦めのビジネス書である。

 著者自らが帯に書いた、「笑いと涙と感動。こん“ビジネス書”見たことない」というキャッチに偽りはない。ビートルを通すときに漁港との交渉物語、お荷物だった外食事業を苦労しながら黒字に転換、27年前の「ゆふいんの森」にはじまり、「あそBOY」「A列車で行こう」といったね~ミンギの話などなど、トピック満載である。

 最後は、「ななつ星の不思議」でしめる。「その1:ななつ星の走っている姿を沿道から眺めるだけの涙ぐむ方々がいる」」「その2:ななつ星が走るときは、その地区だけ台風も大雨も避ける」「その3:ななつ星に関わると、七づくしに遭遇する」と続く。ななつ星は先ごろ、「日本サービス大賞」の内閣総理大臣賞を受賞している。言うまでもないが、タイトルの「鉄客商売」は著者がファンの池波正太郎「剣客商売」になぞらえている。

書籍情報

鉄客商売~JR九州大躍進の極意~

唐池恒二、PHP研究所、p.249、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。