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横田英史の読書コーナー

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方~成功を引き寄せるマーケティング入門~

森岡毅、KADOKAWA/角川書店

2016.9.1  2:10 pm

 P&G のマーケッターから転職した筆者が、業績不振のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を立て直し、2015年10月に単月だが東京ディズニーランドを超えて集客数で日本一のテーマパークになるまでの軌跡を、戦略思考の考え方とマーケティング理論から論じた書。

 事例が具体的なので説得力に富み、楽しく読める。ちなみにタイトルのある「たった1つ」とは、「消費者視点(Consumer Driven)という価値観と仕組みにUSJを変えたこと」。これがV字回復の最大の原動力だと著者は分析する。USJ がマーケティング重視の会社となった結果、新規事業の成功率が30%から97%に高まったという。すごい数字である。仕事に活かせるヒントがふんだんに盛り込まれており、マーケティングに興味をお持ちの方だけではなく、多くのビジネスパーソンにお薦めの1冊である。

 筆者が USJ におけるマーケティングの成功例として挙げるのが、2010年のクリスマスイベントと2011年の ハロウィーンイベント。それぞれ、どのように考え、どう仕掛けたのかを具体的に紹介する。クリスマスイベントでは、ハート・オープンニング・イベント(消費者の感情を大きく動かすイベント)を狙いTV コマーシャルを効果的に使った。確かに文字を読むだけでもこの TV コマーシャルの内容にはぐっとくるものがある。

 ハロウィーンイベントを発想するキッカケも興味深い。日本の女性は、ずっとストレスが溜まりやすい社会環境に置かれているのに、安心してストレスを発散できる手段に恵まれないと分析。思いっきり叫んでストレスを発散できる「無礼講のハロウィーン・ホラー・ナイト」を企画し、大成功を収めた。40万人以上の集客増を2カ月で達成した。スパイダーマンには140億円の設備投資を費やしたが、ハロウィーン・ホラー・ナイトは設備投資がいっさいなしで、スパイダーマンの年間集客効果を1/6の期間で成し遂げたという。

書籍情報

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方~成功を引き寄せるマーケティング入門~

森岡毅、KADOKAWA/角川書店、p.261、¥1512

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。