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横田英史の読書コーナー

知の逆転

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン、吉成真由美、NHK出版新書

2016.9.30  6:34 pm

 「銃・病原菌・鉄」の著者ダイアモンド、「普遍文法」を提唱したチョムスキー、人工知能の父と呼ばれるミンスキーなど、タイトルにならぶ知の巨人たち(帯では世界の英知)6人へのインタビューで構成した書。筆者は巧みな問いかけで、6人の世界観や宗教観、技術観、日本観、人間性(個性)を引き出している。逸品ともいえる書である。

 中身は極めて刺激的。ジャレド・ダイアモンドの世界観・社会観にはさすがと感心させられる。ノーム・チョムスキーのインタビューではトランプ台頭を予言するようなくだりも出てくる。マービン・ミンスキーのロボットについての見識はさすがである。出色で読み応え十分なのはDNAの2重らせん構造を発見したジェームズ・ワトソンのインタビュー。現代の社会や科学技術、アカデミックの世界について懐疑的で苦言を連発する。

 予想通り6人ともかなり個性的で、インタビュアーである筆者の苦労がしのばれる。6人がいずれも無宗教を公言したり、宗教と一線を画しているところも興味深い。

書籍情報

知の逆転

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン、吉成真由美、NHK出版新書、p.304、¥929

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。