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横田英史の読書コーナー

ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実~ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?~

クリスチャン・ラダー、矢羽野薫・訳、ダイヤモンド社

2016.11.15  2:31 pm

 世界最大級の出会い系サイトOkCupidにおけるユーザー行動から得たデータの分析結果を解説したデータサイエンスの入門書。イマ風で実に興味深い。恋愛や性的指向、容姿、願望といった男女や人種間の微妙な考え方の差や潜在意識を明らかにする。グラフを駆使して分かりやすく解説しており楽しめる。OkCupidの創業者の一人である筆者は、「データからすべての人に通じる普遍的な分析を導くことを目指したい」と語っているが、ある程度成功しているといえそうだ。

 本書が扱う対象は広い。例えば女性が魅力的だと思う男性の年齢(あるいはこの逆)、男性が最も多くメッセージを送った女性の年齢、外見の魅力が満足度に与えるデートの印象に与える影響、人種による好きな異性の特徴の違いなど、具体的な話が多くつい引き込まれる。自己紹介に使うあるいは使わない言葉の人種による違いというのも面白い。白人は主に髪と目、アジア系は出身国、ラテン系は音楽で自分を差別化するという。

 このほか、OkCupidで交わされる単語や文章を分析し、文章を書く行為は絶滅の危機に直面しているのではなく、新たな可能性を次々に発見している最中だと断じる。興味深い見方である。ちなみに最も優秀なメッセージ、最もレスポンス率が高いメッセージは40~60字という。

書籍情報

ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実~ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?~

クリスチャン・ラダー、矢羽野薫・訳、ダイヤモンド社、p.280、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。