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横田英史の読書コーナー

クラウド時代の思考術~Googleが教えてくれないただひとつのこと~

ウィリアム・パウンドストーン、森夏樹・訳、青土社

2017.4.4  9:43 am

 タイトルと内容に少々ギャップがあるが、内容自体は充実しており役立ち感がある。トランプ大統領誕生や英国の EU 離脱、ポピュリズムの台頭といった時代の流れの背景を、知識や技術に欠けた者は知らないことに無自覚という「ダニング・クルーガー効果」にあることをデータに基づいて解明する。今の時代を考える上で貴重な情報を提供しておりお薦めの1冊である。

 不完全な知識はゆがんだ心の世界地図を作り上げ、事実を正しく知らないことが判断を誤らせる。有権者のほとんどは情報に乏しく、自分の気に入った証拠だけをつまみ食いする傾向が強い。感情に訴えかける政治的なプロパガンダに簡単に乗せられる。民主主義はこうした大衆の知恵に基礎をおいていることに気をつけるべきだと警鐘を鳴らす。

 筆者は、アメリカ人の無知さ加減を明らかにする。事実を問う質問に対して正しい答えを出す者は、国境にフェンスを作ることに賛成する度合いが低くなるという。本書を読むと、知識の欠如がフェイクニュースに簡単に騙される状況を作り出している現状がよく理解できる。原書は2016年7月に出版されているので、トランプ大統領誕生を予言する内容になっているとも言える。

書籍情報

クラウド時代の思考術~Googleが教えてくれないただひとつのこと~

ウィリアム・パウンドストーン、森夏樹・訳、青土社、p.430、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。