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横田英史の読書コーナー

チャヴ~弱者を敵視する社会~

オーウェン・ジョーンズ、依田卓巳・訳、海と月社

2017.10.20  10:06 am

 英国社会、特に労働者階級の実態や政治状況を知らないかを思い知らされた書。米国についてはトランプ大統領誕生によって、アメリカの繁栄から取り残された白人たちの状況に注目が集まった。勉強のために何冊か本を読んだ。同様のことが英国でも起こっていることが本書を読むとよく分かる。注目度で米国に劣る英国社会の実態の一端を知りことができる良書である。極右や移民排斥が台頭する欧州社会の状況を理解したい方に向く。

 チャヴ(Chav)とは英国の労働者階級を見下す言葉。労働者階級に関連した暴力、怠惰、10代の妊娠、人種差別、アルコール依存などネガティブなイメージを連想させるという。筆者はこうした状況を生んだ要因を一つひとつ明らかにする。とりわけ炭鉱労働者をはじめとする労働階級を痛めつけたサッチャリズムと、労働党のニューレーバー政策、先入観に囚われ根拠もないことを書き立てるメディアを要因として挙げる。労働階級のために闘ってくれる政治家がいなくなり、「地の塩」だった労働者階級が政治によって「地のクズ」と見なされるようになったという。

書籍情報

チャヴ~弱者を敵視する社会~

オーウェン・ジョーンズ、依田卓巳・訳、海と月社、p.392、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。