横田英史の読書コーナー
難題が飛び込む男
土光敏夫、伊丹敬之、日本経済新聞出版社
2017.12.6 10:07 am
石川島重工業・石川島播磨重工業 社長、東芝 社長・会長、日本経済団体連合会会長、第二次臨時行政調査会長などを歴任した「メザシの土光さん」の評伝。石川島重工、東芝、臨調とほぼ15年周期で難題が降り掛かってきた土光の経営者としての歩みを活写する。城山三郎が土光を「一瞬一瞬にすべてを賭ける、という生き方の迫力。それが80年も積り積もると、極上の天然記念物でも見る思いがする」と評している。日本人の琴線に触れる評伝である。
筆者は経営学者の伊丹敬之。土光の経営手法を「直接話法経営」「現場の達人」と分析しているところに学者の視点を感じるが、全体に経営書ぽくはない。一方で、小説家の手による評伝のような脚色もなく盛り上がりに少々かける。
筆者は経営者としての土光の勝敗を2勝1分けと評価する。2勝は石川島重工業と臨調。1分けは東芝である。石坂泰三に懇請によって社長に就いた東芝は、最初の3年こそ業績を伸ばしたが後半は失速した。土光に考えどおりには動かない東芝の経営の難しさを、社員と土光のやり取りを中心に筆者は詳細に描いている。現在の東芝の悲劇に通じる部分も多く興味深い。
書籍情報
難題が飛び込む男
土光敏夫、伊丹敬之、日本経済新聞出版社、p.272、¥1944
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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