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横田英史の読書コーナー

悲劇的なデザイン

ジョナサン・シャリアート、シンシア・サヴァール・ソシエ、高崎拓哉・訳、ビー・エヌ・エヌ新社

2018.1.12  6:45 pm

 デザインがテクノロジーにもたらすインパクトが高まっているなか、リスク管理の観点から製品デザインの重要さを実例を挙げながら解説した書。事例が豊富かつ具体的で分かりやすい。組み込み業界にとっても重要な指摘が含まれており、EIS の皆さんにお薦めできる1冊である。

 冒頭ではデザインによって人の命が奪われた医療機器の例を挙げる。デザインによっては製品を使うことが人を怒らせたり、悲しませたり、失礼にあたったり、疎外感を与えることになりかねないと説く。例えば意図的に複雑にデザインされた“ダークパターン”の製品は人の気持を逆なでし、怒りを煽るとする。

 筆者は、クリエータが第一でユーザーを二の次にし、多様性や公平さに欠けるデザインの数々を槍玉に挙げる。思いつきでモノを作り、新しいアイデアやお金、トレンドを追っているデザイン業界は本当の価値を生み出しているのかと警鐘を鳴らす。優れたデザインには、ユーザーへの共感が不可欠だと指摘する。しかし共感と分析を同時に行うのは、神経上の制約があり難しい。共感するには、ハードなデータで頭を一杯にしてはいけないと強調する。

書籍情報

悲劇的なデザイン

ジョナサン・シャリアート、シンシア・サヴァール・ソシエ、高崎拓哉・訳、p.240、ビー・エヌ・エヌ新社、¥2808

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。