横田英史の読書コーナー
日本の15歳はなぜ学力が高いのか? ~5つの教育大国に学ぶ成功の秘密~
ルーシー・クレハン、橋川 史・訳、早川書房
2018.2.4 4:44 pm
企画の良さが際立つ書。筆者である英国女性教師が、OECD(経済協力開発機構)が行っている国際学力テスト「PISA」で高い点数をとる5カ国はどのような教育を行っているかを各国の教育現場に潜入して探ったルポルタージュである。調査したのは日本、フィンランド、シンガポール、中国、カナダの5カ国。アジアの3カ国については西欧人の固定観念を打ち砕く結果になった。ちなみに PISA は読解力と数学的リテラシー、科学的リテラシーにおける知識と応用力を試すテストである。
調査の手法がユニークだ。招待されてピカピカのトップ学校を訪れても実情は分からない。そう考えた著者は、現地の教師の家庭に2~3週間滞在し、ライフスタイルや文化に触れる。さらに非公式な形で学校を訪れ、一つの学校に少なくとも1週間は通って普通の授業を参観する手段に出る。この結果をまとめたのが本書である。日本のゆとり教育に対する指摘には“?”の部分もあるが、教育レベルの高い国の施策を一つの視点から見ている点で意義深い。
筆者は、学力を伸ばすために競争は不可欠なのか、勉強は何歳から始めるのが効果的なのか、子どものやる気を高めるにはどうすればいいのか、といった疑問に答えていく。最後に、高い成果と公平性を実現するための「5つの原則」を掲げる一方で、PIAS で高得点を取る代償について持論を展開する。
書籍情報
日本の15歳はなぜ学力が高いのか? ~5つの教育大国に学ぶ成功の秘密~
ルーシー・クレハン、橋川 史・訳、早川書房、 p.352、¥2446
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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