横田英史の読書コーナー
秘密解除 ロッキード事件~田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか~
奥山俊宏、岩波書店
2018.3.16 2:18 pm
米国の国立公文書館や歴代大統領の図書館で発掘した秘密解除された公文書をもとに、ロッキード事件の真相に挑んだ書。田中角栄、児玉誉士夫、三木武夫、中曽根康弘といった名前が次々に登場する。筆者はロッキード事件の謎解きだけではなく、「米国に首根っこを押さえつけられた日本の政治家」といった構図も明らかにする。調査報道の真髄を知ることができる良書で読んで損はない。第21回司馬遼太郎賞を受賞したのも納得できる。ちなみに筆者は朝日新聞編集委員である。
本書の特徴は、徹底的に米国の視点に立っているところ。米国の政府高官の視点で、日本の政治や政治家、保守勢力、企業を分析している。田中角栄がロッキード事件で逮捕された理由として、「石油資本による陰謀説」を挙げる向きがあるが、筆者は根拠がないと一蹴する。田中角栄はその政策(例えば石油政策)によってキッシンジャーの反感を買ったから失脚したのではなく、人となりを理由に悪しざまに批判され軽蔑されていたところに原因をみる。「腐敗のオーラを纏った嘘つき」「生涯、本当の言葉を口にしたことがない」など厳しい人物評が並ぶ。
筆者が最も訴えたかったのは、日本の国益に「米国の虎の尾を踏むこと」「CIAからの資金提供が暴露されること」への政治家の恐れが影響していないかというところ。米国に弱みを握られた日本の政治家が、無言の圧力を感じることで、政策を歪めていないかを危惧する。
書籍情報
秘密解除 ロッキード事件~田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか~
奥山俊宏、岩波書店、p.272、¥2052

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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