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横田英史の読書コーナー

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ)〜マイクロソフト再興とテクノロジーの未来〜

サティア・ナデラ、グレッグ・ショー、ジル・トレイシー・ニコルズ、日経BP社

2018.4.13  5:07 pm

 米マイクロソフトの第3代CEOであるサティア・ナデラが半生を振り返るとともに、経営哲学や信条、CEO就任以来どのような経営判断を下してきたか明らかにした書。例えば、なぜ「共感経営」を基本に置くかを自らの言葉で説明する。パソコン市場の成熟とともに勢いを失ったマイクロソフトの変革に着手し、復活させた手腕を自画自賛する書かと思って読み始めたが、自らの考え方を率直に吐露しており意外に面白い。AIなど今後の技術トレンドに対する見解も納得できるところが多く、役立ち感がある。

 2014年のCEO就任時、多くの社員は「マイクロソフトは魂を失った」と感じていたという。Windows第一主義から決別する“リフレッシュ・ボタン”を押すべき時期だと判断し、企業文化の刷新に乗り出した。本書でナデラは、経営判断を下す時々にどのように考え、どのように決断したかを詳細に披露する。レイ・オジーの「変革は内部から生まれなければ定着しない」、スティーブ・バルマーの「これまで確立された主義や信条などを取り払うべき。勇敢であれ、正しくあれ」といった言葉はなかなかいい。

 変革のポイントは、自社のテクノロジーを使い、自社のアイデンティティを証明する事業を展開して、顧客に独自の価値を付与することに定め、「顧客に使われるだけではなく、愛される製品を提供する」ことに重点を置いた。「信頼は長期にわたって一貫していること」「完全であるよりは一貫している方がいい」という信条もすっと腑に落ちる。

書籍情報

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ)〜マイクロソフト再興とテクノロジーの未来〜

サティア・ナデラ、グレッグ・ショー、ジル・トレイシー・ニコルズ、日経BP社、p.352、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。