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横田英史の読書コーナー

闘う商人 中内功〜ダイエーは何を目指したのか〜

小榑雅章、岩波書店

2018.4.18  7:28 pm

 中内功の秘書を務めた著者による評伝。ダイエーの成長から崩壊までの過程をつぶさに綴る。中内に仕える前は、暮しの手帖の編集者として花森安治に鍛えられただけあって、冷静に中内の足跡や経営手法を観察している。1990年に始まったバブル崩壊と、1995年の阪神淡路大震災によって傷んだダイエーが崩壊に至るまでのプロセスは、中内の側近による証言だけに読み応え十分である。

 印象に残るのは、業績回復のために中内にCEO退任を迫ったが決裂して辞表を叩きつける冒頭のシーンや、中内を諌めるために送った手紙の数々。中内の長男・潤に対する評価も興味深い。このほかカラーテレビをめぐる家電メーカーとの闘い、経団連における重厚長大企業との闘い、大規模小売店舗立地法(大店法)の問題、流通科学大学の設立など、昔懐かしい話が満載である。

書籍情報

闘う商人 中内功〜ダイエーは何を目指したのか〜

小榑雅章、岩波書店、p.304、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。