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横田英史の読書コーナー

誰もが嘘をついている〜ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性〜

セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ、酒井泰介・訳、光文社

2018.5.16  1:15 pm

 米グーグルでデータサイエンティストだった筆者が、「実名ベースのFacebookやSNSには人々は取り繕った側面しか見せないが、人知れず密かに行われるグーグルやポルノサイトの検索には人間の本性や本音が表れる」「検索履歴から社会の実相が分かる」ことを数々の事例を基に主張した書。筆者はグーグルの検索履歴を「デジタル自白剤」と呼ぶが、言い得て妙である。ちなみにトランプ大統領の誕生も、グーグルの検索結果から予想できたとする。

 事例が豊富で読者を飽きさせない。ビッグデータ分析の威力を感じさせる書であり、今の時代を理解するうえで役に立つ。筆者は、人々の心の闇をビッグデータから把握することが現代の問題を解決するための第一歩になるとし、ビッグデータ分析の重要さを訴える。

 本書では、「米国における人種差別の実態」「検索入力の順番で、どの候補者が当選するかが分かる」「人々は実際にはどれほどセックスをしているのか」「自分の体で最も気になる部分は何か」といった身近な話題を紹介する。このほか、「リベラルと保守派はそれぞれ別のメディアから情報を得ている」「プロバスケットNBAのスター選手は貧困家庭出身」「人々は暴力的で悲劇的な話題を好む」などの通説や直感は、ビッグデータの分析結果から当てにならないことを明らかにする。

書籍情報

誰もが嘘をついている〜ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性〜

セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ、酒井泰介・訳、光文社、p.352、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。