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横田英史の読書コーナー

日本の企業家 11 安藤百福〜世界的な新産業を創造したイノベーター〜

榊原 清則 、PHP経営叢書

2018.9.27  10:57 am

 インスタントラーメンの生みの親である安藤百福の評伝。1958年の「チキンラーメン」、1971年の「カップヌードル」の発明物語のほか、経営者としての安藤の足跡をたどっている。筆者は、発明家と起業家の両面から魅了的な人物像を描くとともに、経営学者らしい分析も加える。本書の最後に載せられた語録や原稿の類もなかなかいい。朝の連ドラの影響で、脚光を浴びている安藤を知る上で貴重な1冊となっている。300ページと紙幅が限られ、駆け足感があるのが少し残念である。

 驚くのは、チキンラーメンの発明が48歳、カップヌードルが61歳ということ。数々の試行錯誤の末に発明に至るパワーと執念には驚かされる。安藤は「発明はひらめきから。ひらめきは執念から。執念なきものに発明はない」と語ったというが、その通りである。天ぷらからヒントを得たインスタントラーメンの製法「油温乾燥法」、カップ内で麺を宙吊りにする中間保持法などを思いつく過程はとても興味深い。

 ちなみに筆者は、安藤の行動パターンと米インテルの「最小情報原則(principle of minimum information)」と関連付ける。最小情報原則とは、課題の解決法について直感的に見当をつけ、代替案を考えずに拙速でもいいので行けるところまで行く。解決しなかったら、元に戻り別の方法を同様に試す、といった手法である。

書籍情報

日本の企業家 11 安藤百福〜世界的な新産業を創造したイノベーター〜

榊原 清則 、PHP経営叢書、p.301、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。