横田英史の読書コーナー
人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」:第三次AIブームの到達点と限界
新井紀子、東中竜一郎、東京大学出版会
2018.11.17 9:58 am
2011年から5年にわたり続けられた人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」の技術的な内容と結果を紹介した書。入試(センター模試)という身近な話題を扱いつつ、現在の第3次AIブームの到着点と限界を論じる。本書は「東ロボ」のシステムの中身について主に研究者に伝えることを目的としており高度な技術的内容が含まれているが、それなりに読みこなせるので心配ない。統計データとビッグデータによるAI技術の限界を具体的に明らかにした書で、AIに関心のある方にお薦めである。
東ロボが対象としたのは英・国・世界史・数・物理の5科目。それぞれについて、どういった解答器を用意したかについて具体的に紹介するとともに、何に躓いたのか、今回見つかった課題をクリアするための今後の見通しを明らかにする。5科目のなかでは数学と世界史で特に優れた成績を収めた。一方で物理では実世界の現象を意味表現に正確に変換することの難しさ、英語と国語では実世界を表す言語現象の複雑さに直面したという。
例えば、国語の小説読解では設問が多岐にわたりどこから攻めていいのか分からない、物理では問題文の語句に表記の揺れがあり障害になった。公式が少ない物理の場合、パターンに当てはめて自動解析が可能なように思えるが、パターンを見えなくする仕掛けが設問の随所にあり、例外だらけだったという。
ちなみに東ロボは2015年、2016年と連続してセンター模試の偏差値が56を超えた。日本の大学の7割について、いずれかの学科に合格する可能性が80%となり、受験生の上位20%以内に到達した。
書籍情報
人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」:第三次AIブームの到達点と限界
新井紀子、東中竜一郎、東京大学出版会、p.296、¥3024

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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