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横田英史の読書コーナー

異端の時代 〜正統のかたちを求めて〜

森本あんり、岩波新書

2019.1.6  10:09 am

 トランプの米国大統領就任をきっかけにして、政治だけではなく宗教や文化にも共通する異端発生のメカニズムを論考した書。政治に関しては「ポピュリズムは異端なのか」という問題意識のもと、宗教の歴史を振り返りながら正統と異端の関係を明らかにする。宗教的な話が長く、必ずしも万人向けではないが、「トランプ大統領とは何なのか」に興味のある方に向く。

 もちろんトランプは異端の系譜だが、正統になる気概がない“エセ”異端と筆者は断じる。筆者の代表作「反知性主義」に通じるキレのある考察は刺激的である。

 異端とは、健康な体の構成要素だった一部が、不均衡に亢進したのが異端だとする。正統の特徴は全体性であり、だからこそ構成要素が無限にあり列挙しきれない。一方の異端はピンポイントで特定部分に光を当てる。民主主義は人民、自由、進歩という構成要素をもつが、それらが互いの制約を逃れて唯一の原理として暴走すると、それぞれポピュリズム、新自由主義、政治的メシアニズムという怪物を生み出してしまう。

書籍情報

異端の時代〜正統のかたちを求めて〜

森本あんり、岩波新書、p.272、¥929

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。