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横田英史の読書コーナー

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 〜10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣〜

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、 アンナ・ロスリング・ロンランド、上杉周作・訳、関美和・訳、日経BP社

2019.1.18  10:15 am

 ビル・ゲイツが絶賛したといわれる書。「世界は戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方である。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きる」。我々が常識だと思いこんでいるこうした勘違いを、データに基づき次々と論破する。知識人と呼ばれる人間も勘違いを免れない。世の中を正しく見るための勘所を的確に押さえており、お薦めである。

 筆者は貧困、人口、教育、エネルギーに関する勘違いを体系的に論じており読ませる。いわゆる通説の誤りを指摘する書籍を読んだことはあるが、ここまで体系だっているのは初めて。軽快な筆致なので、400ページの書でもあっという間に読み通せる。

 ほとんどの人は、実際よりも世界は怖く、残酷だと考えている。勘違いを生むのは、分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン本能、宿命本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能の10の本能である。マスコミはこうした人間の本能を利用して「世界をドラマチックに仕立て上げる」。こうした本能がマスコミの雇用を支えていると手厳しい。

書籍情報

FACTFULNESS(ファクトフルネス)〜10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣〜

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、 アンナ・ロスリング・ロンランド、上杉周作・訳、関美和・訳、日経BP社、p.400、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。