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横田英史の読書コーナー

天才のひらめき〜世界で最も創造的な人びとによる13の思考ツール〜

ロバート・ルートバーンスタイン、ミシェル・ルートバーンスタイン、不破章雄・訳、萩野茂雄・訳、早稲田大学出版部

2019.3.26  11:07 am

 アインシュタインやピカソ、ファインマンといった天才たちの発想法を分析した書。天才が天才たるゆえん、天才のひらめきがどこから生まれたかを探り、創造的な仕事を行うにはどういった訓練をすべきかを披露する。独創的な発想を生むための方法論があるというのが筆者の主張である。結論の個々に驚くべき内容が含まれる訳ではないが、13もの切り口で分析しているところに価値がある。イノベーションが声高に叫ばれる現在、読んで損はない書である。

 筆者は、天才たちが残した数々の発言をもとに、着想力・創造力、観察力、イメージ化、抽象化、パターン化、類推思考、体感的思考、共感的思考などの観点から天才たちの思考法を分析する。論理的に思考するのではなく、まず「感じること」の大切さを説き、思考の道具として感情、視覚的着眼、身体感覚、類推などを挙げる。感情的思考に関する講義をカリキュラムに取り入れるなど、統合・融合化された教育が必要だと説く。

 400ページを超える大著だが、翻訳が良く読みやすい。ちなみに邦訳は2018年11月に出版されているが、原著の出版はなんと1999年と20世紀末である。大学出版会でないと出版しづらい書とも思えないので、少々不思議である。

書籍情報

天才のひらめき〜世界で最も創造的な人びとによる13の思考ツール〜

ロバート・ルートバーンスタイン、ミシェル・ルートバーンスタイン、不破章雄・訳、萩野茂雄・訳、早稲田大学出版部、p.464、¥2484

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。