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横田英史の読書コーナー

第一印象の科学〜なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?〜

アレクサンダー・トドロフ、中里京子・訳、みすず書房

2019.4.22  10:12 am

 プリンストン大学心理学部教授が、顔に対する第一印象を題材に心理学、認知科学、脳科学、コンピュータ・サイエンスなどの知見を用いて我々の行動と意思決定の仕組みを探った書。第一印象が選挙の投票にどの程度影響するか、男性はどういった女性に惹かれるか、女性はどういった男性に惹かれるか、赤ちゃんは生まれたときから信頼できる人を知っているか、といった話題を取り上げる。第一印象に関する数々の誤解も解いており、知的好奇心を満足させられる書である。認知科学や心理学好きの方に向く。

 眉毛や目、口もと、肌のテクスチャを変更して顔の印象がどのように変わるかを、モーフィングや合成写真などを効果的に使って議論を展開している。感情の表現には目よりも眉の方が重要という。外交的な顔、内向的な顔、信頼できる顔、信頼できない顔、有能な顔、無能な顔などを具体的に示しており理解が進む。ちなみに人間はわずか0.1秒で顔を認識できる。それだけ顔は迅速に人の注意を引く。週刊誌の中吊り広告に顔写真が使われるのには科学的な根拠がある訳だ。

 顔に対する印象は、個人的な体験によって左右されるという。例えば人は、自分の顔に似ている人間に投資や投票をし、結婚する傾向がある。はてはペットまで。夫婦の顔やペットが飼い主に似ているのも当然なのかもしれない。

書籍情報

第一印象の科学〜なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?〜

アレクサンダー・トドロフ、中里京子・訳、みすず書房、p.408、¥4104

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。