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横田英史の読書コーナー

21世紀の長期停滞論〜21世紀の長期停滞論〜

福田慎一、平凡社新書

2019.7.4  9:50 am

 東京大学経済学部の教授が、「実感のない景気回復」に世界経済が陥っている原因を検証し解決策を探った書。過去の経済学の理論や経験が通用しない状況だけに、米国の経済学者ローレンス・サマーズの「長期停滞論」など多くの論考が存在するが、本書は各種の論文を手際よくまとめており明快で分かりやすい。新書らしい新書に仕上がっているので、21世紀の長期停滞論に興味がある方にお薦めの1冊である。

 低金利による刺激策が効果を挙げず、物価上昇も限定的。リーマンショックによる影響から抜け出せず、本来の実力よりも低い状態が続くGDP。こうした21世紀の長期停滞には2つの原因が考えられている。一つは過剰貯蓄(需要不足)に原因を求めるもの。もう一つは供給能力の低下(潜在成長率の低下)に原因を求めるものである。本書は、構造的な問題に一つひとつ検証しながら、図を効果的に使い丁寧に解き明かす。

書籍情報

21世紀の長期停滞論〜21世紀の長期停滞論〜

福田慎一、平凡社新書、p.222、¥864

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。