横田英史の読書コーナー
AIと憲法
山本龍彦、日本経済新聞出版社
2019.7.13 10:34 am
AIに法人格を与えるべきか、自動運転者が事故を起こした場合の責任はどこに帰属すべきかなど、若手の法律学者たちがAIを法的にどのように位置づけるべきかを論じた書。堅苦しいタイトルだが、AIを体系だって分析するプロセスは意外に刺激的で興味深い。企業の採用人事や与信、犯罪者予測にAIが使われ始めた時代に、人間の権利をどのように守るべきかを論じた本書は時宜を得ている。一読をお薦めする。
本書は、AI時代における個人の尊重とプライバシー、表現の自由の問題、民主主義や選挙制度、裁判、刑事法との兼ね合いなどを取り上げる。AIは経済合理性や効率性、正確性、機能などで論じられることが多いが、AIが人間社会を大きく変えようとしている現在、哲学的・法律的な議論が不可欠であること改めて思い起こさせる。
ビッグデータに基づくAIの予測・評価は集団主義の発想に基づき、個人を集団の一部として捉えている。例えば学習データの偏りによって差別や社会的排除が加速され、民主主義の破綻につながると指摘する。過去のデータに基づいて「潜在的犯罪者」と分類されことで、更生の機会を奪われる可能性もある。個人を掛け替えのない個人として尊重しようとする日本国憲法の基本原理に反しているといのが本書の主張である。
書籍情報
AIと憲法
山本龍彦、日本経済新聞出版社、p.480、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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