横田英史の読書コーナー
民主主義の死に方〜二極化する政治が招く独裁への道〜
スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット、濱野大道・訳、新潮社
2019.9.23 9:45 am
この書評では社会的・文化的な背景に関する書を紹介してきたが、本書はトランプ大統領誕生の背景を米国の政治史を踏まえリベラル側の視点から論じている。トランプ大統領の誕生は偶然ではなく、米国の政治的には必然であったことがよく分かる。本書を読むと、民主主義の死を目撃している気分になり暗澹たる気持ちになる。
筆者は中南米と欧州における合法的な独裁化の過程を明らかにし、「選挙で選ばれた独裁者たちが、驚くほど似た戦略を使って民主主義の制度を破壊してきた事実」を指摘する。筆者が問題視するのは、第1に民主主義のルールを無視する姿勢、第2に対立相手の正当性の否定、第3に暴力の許容・促進、第4に対立相手や批判者の社会的自由を率先して奪おうとする姿勢である。こうした姿勢に対する拒否反応は当初強いものの、徐々に慣らされる。共和党と民主党に二極化する政治状況が独裁への道を開きつつあると筆者は危機感を募らせる。
筆者は米国における民主主義の脆弱性を、選挙制度と憲法に関連付けて論じる。米国の民主主義が脆弱性を抱えつつ機能してきたのは、「相互的寛容と組織的自制心」によるところが大きかった。憲法や法律に書かれていない、広く認知され尊重されてきた非公式のルールが、党派間の闘いを避ける「柔らかいガードレール」として有効に機能した。しかし、この柔らかいガードレールは1990年代後半のギングリッチ登場で傷つき始め、オバマが退任する頃には崩壊寸前となった。ついには礼節、メディアへの敬意、嘘をつかないという不文律を平気で破る大統領の登場に至ったという。
書籍情報
民主主義の死に方〜二極化する政治が招く独裁への道〜
スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット、濱野大道・訳、新潮社、p.320、¥2750

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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