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横田英史の読書コーナー

マーケティングのSONY〜市場を創り出すDNA〜

立石 泰則 、岩波書店

2020.1.20  10:55 am

 ソニーの強さを営業やマーケティングの視点から描いたノンフィクション。ソニーの取材を30年近く続けているノンフィクション作家による丹念な取材がベースになっており、読み応え十分だ。好業績のシニーにあやかった「ソニー本」とは一線を画し、お薦めである。

 筆者の問題意識は、なぜ日本の家電産業が欧州と同じ衰退の道を選んだのかという点にある。本書は、その過程を描き、衰退の理由を解明するライフワークの第1弾と位置づける。経営の判断が現場にどのような影響を与え、現場がどう対応したかをソニーを題材に検証しており興味深い。

 筆者は黎明期から、ソニー神話が生まれた時期、ソニーショックの迷走期、もがきながら再浮上中の現在まで、盛田、大賀、出井、ストリンガー、平井に至る社長の評価を交えながら、販社ソニーマーケティングを中心にマーケティングの変遷を追っている。手練のノンフィクション作家らしく、盛田に始まる「市場を作り出すDNA」をうまく描き出しているのは流石である。盛田が語った「マーケティングはエデュケーションである」は卓見だ。

書籍情報

マーケティングのSONY〜市場を創り出すDNA〜

立石 泰則 、岩波書店、p.325、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。