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横田英史の読書コーナー

フェイクニュースに震撼する民主主義〜日米韓の国際比較研究〜

清原聖子、ほか、大学教育出版

2020.1.28  11:00 am

 日米韓の選挙におけるフェイクニュースの状況と有権者の動向を多面的に論じた書。日本は2019年の参議院選、米国は2018年の大統領選、韓国は「フェイク選挙」と呼ばれた2017年の大統領選を取り上げる。本書の特徴は、自らが好まない情報が事実だとしても「嘘だ」と繰り返すトランプ流もフェイクニュースに含んで分析しているところ。筆者は、無視しなければならない政治家の誤った主張や嘘を取り上げ、時間を費やすことで、ニュースとしての価値を与えるメディアに警鐘を鳴らす。民主主義の行く末に興味のある方に向く書である。

 米国の有権者は政治イデオロギー的価値観を共有する情報しか見ない。つまりメディアの分断が、米国におけるフェイクニュース現象の要因だと分析する。筆者は、フェイクニュースに対抗するプラットフォーマーなどの事業者の自主的な規制についてもページを割いている。

 韓国の大統領選は、2007年がSNS選挙、2012年がビッグデータ選挙、2017年がフェイクニュース選挙と呼ばれた。韓国のSNSなどのメディア事情を寡聞にして知らなかったので、評者は本書を興味深く読むことができた。韓国における有権者とメディアの分断は米国と類似する。若者と高齢者でSNSの使い方が全く異なり、それぞれが違った形でフェイクニュースを共有し拡散しているという。フェイクニュースを規制する法案やメディアリテラシー教育の法案化といった動きも取り上げる。

書籍情報

フェイクニュースに震撼する民主主義〜日米韓の国際比較研究〜

清原聖子、ほか、大学教育出版、p.210、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。