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横田英史の読書コーナー

敗者が変えた世界史 下〜リー将軍、トロツキーからチェ・ゲバラ〜

ジャン=クリストフ・ビュイッソン、エマニュエル・エシュト、神田順子・訳、田辺希久子・訳、原書房

2020.1.31  11:02 am

 いったんは栄光に浴しながらも、一敗地に塗れた13人の物語の下巻。リー将軍(米国南北戦争の南軍の指揮官)、トロッキー、蒋介石、チェ・ゲバラ、リチャード・ニクソンなどを取り上げる。頂点に上り詰めたあと、どん底に堕ちた原因を明らかにする。虚栄心や尊大、傲岸、慢心、優柔不断など、今に通じるものがあり味わい深い。上巻に比べ近代の人物なので、ぐっと身近である。一方で、知らないことの多さに驚かされる。一人ひとりの人物がコンパクトにまとめられているのもいい。歴史好きに向く書である。

 評者が興味深く読んだのはチェ・ゲバラとリチャード・ニクソン。例えばゲバラ。ゲバラ日記こそ読んだが、その人生を客観的に描いた書を読んだのは初めて。キューバ革命時のゲバラの活動には少々驚かされた。

 ニクソンを好意的に描いているのも本書の本書の特徴である。ニクソンには「指導者とは」という名著があるが、その内容とウォーターゲート事件で辞任する姿のギャップが大きかった。本書を読み、ギャップの意味が少し理解できたような気がする。

書籍情報

敗者が変えた世界史 下〜リー将軍、トロツキーからチェ・ゲバラ〜

ジャン=クリストフ・ビュイッソン、エマニュエル・エシュト、神田順子・訳、田辺希久子・訳、原書房、p.232、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。