横田英史の読書コーナー
教養としてのコンピューターサイエンス講義〜今こそ知っておくべき「デジタル世界」の基礎知識〜
ブライアン・カーニハン、酒匂寛・訳、日経BP
2020.4.6 12:23 pm
「プログラミング言語 C」の共著者ブライアン・カーニンハム 米プリンストン大学教授による「コンピュータサイエンス」の啓蒙書。知的財産権、特許、著作権、ライセンスなどにも言及する。サブタイトルに掲げる「今こそ知っておくべき『デジタル世界』の基礎知識」通りの内容である。語り口は平易だが、読みこなすのは必ずしも容易ではない。そこここに技術用語が登場するので、それなりの基礎知識が要求される。組込み業界の方にとって、頭の整理に丁度よいレベルだろう。
技術的な内容を噛み砕き、平易な表現でコンピュータサイエンスの勘所を手際よく解説する。坂村健教授が解説で述べているように、図は少ないものの効果的に使っているのはさすがである。時おり掲げる写真もなかなかいい。
本書のカバー範囲は大きく3つ。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークである。インターネットを含むネットワークがほぼ半分のページを割く。コンピュータ・サイエンスにおけるインターネットの衝撃がよく分かる。一方でハードウェアとソフトウェアの記述には「時間が止まった感」がある。ハードウェアでは、2進数、ビットとバイト、CPUから説き始める。ソフトウェアでは、アルゴリズムやプログラミング言語、OSについて解説する。オープンソースやJavaScriptが比較的新しい話題といえそうだ。
一方でネットワークは、TCP/IP、帯域幅、圧縮、暗号、インターネット、セキュリティ、検索エンジン、Webマーケティング、SNS、プラバシーなど幅広い。時代の要請と流れを反映した格好である。
書籍情報
教養としてのコンピューターサイエンス講義〜今こそ知っておくべき「デジタル世界」の基礎知識〜
ブライアン・カーニハン、酒匂寛・訳、日経BP、p.496、¥2860