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横田英史の読書コーナー

技術覇権 米中激突の深層

宮本雄二、伊集院敦、日本経済研究センター、日本経済新聞出版

2020.5.22  5:41 pm

 新型コロナで激化する米中関係もあって、2冊連続で“中国もの”になった。本書は先端技術を巡る米中のせめぎ合いを分析している。日本経済研究センターの報告書「米中技術覇権と日本」をベースに一般向けに再編集したもの。鋭さはあまり感じないが、歴史的な経緯や両国の国内事情、最近の動きを踏まえ整理されている。米中の技術覇権争いの全体像を把握できる書に仕上がっている。

 日本が米国と中国にどのように対応すればよいかを取り上げた第8章「米中『冷戦』下の日本のルール形成戦略」はきめ細かく議論を展開している。読み応えがある内容でお薦めだ。中国の貿易政策、投資政策、サイバー、経済援助、エネルギー政策に対する危機感が米国防権限法の改定につながった。日本は研究開発体制やサプライチェーンの再構築、おとり捜査への対応、電子証拠保全体制の構築が求められることを明らかにする。

 経済の相互依存関係が希薄だと、戦争の勃発を抑止できない。米国と中国のデカップリングは危険であり、日本が米中に対して行うべき外交は自ずと明らかだという指摘は注目に値する。

書籍情報

技術覇権 米中激突の深層

宮本雄二、伊集院敦、日本経済研究センター、日本経済新聞出版、p.264、¥2750

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。