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横田英史の読書コーナー

僕らはそれに抵抗できない~「依存症ビジネス」のつくられかた~

アダム・オルター、上原裕美子・訳、ダイヤモンド社

2020.6.5  11:25 am

 ゲーム、スマホ、SNS、メール、活動量計などで、ユーザーを抵抗不能な依存患者にする「行動嗜癖」を論じた書。なぜ我々が“ハマる”のかを考察する。依存を作り出す6つのテクニック、依存症に陥らないための3つのソリューションなどを提示する。ジョブズが子供にはiPadを使わせていなかったというエピソードを導入部で紹介し、読者をぐっと引き寄せる。「なるほど」と思わせる論理展開など、筆者はなかなかの手練(てだれ)である。具体例が豊富で読みやすい。

 筆者は行動嗜癖とはなにか、いつ始まり、どのように広がったか、誰がデザインしているのか、なぜハマるのかについて論じる。依存症は物質依存から行動依存に移りつつあるとする。興味深いのは行動嗜癖が人を操る6つのテクニックを紹介しているところ。6つとは目標、フィードバック、進歩の実感、難易度のエスカレート、クリフハンガー、他人と比較したい社会的相互作用である。たとえばテトリスは「難易度のエスカレート」、未達成感で続編に誘うNetflixは「クリフハンガー」、スーパーマリオは「進歩の実感」に分類し解説する。

 評者はここ数年、歩数計にはじまり活動量計を使い続けている。1万歩に到達したか、睡眠時間や睡眠の質は十分か、ストレスで心拍数が上がっていないかなど、日々気にしながら過ごしている。十分に依存症ビジネスに絡みとられている。

書籍情報

僕らはそれに抵抗できない~「依存症ビジネス」のつくられかた~

アダム・オルター、上原裕美子・訳、ダイヤモンド社、p.432、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。