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横田英史の読書コーナー

モビリティ・エコノミクス〜ブロックチェーンが拓く新たな経済圏〜

深尾三四郎、クリス・バリンジャー、日本経済新聞出版

2020.12.27  2:19 pm

 ブロックチェーンを用いた非金融系プロジェクトの最前線を取り上げた書。筆者の2人がモビリティにおけるブロックチェーンや分散台帳技術の標準化と普及を促進する非営利団体MOBIの関係者ということもあって、EVやMaaSなど自動車関連の話題を中核に据える。筆者は今後の自動車産業を、生産台数で評価する業界から、データを資源とするモビリティ産業へと変貌しなければならないとする。車両の日々の走行をマネタイズする仕組みが必要となり、ブロックチェーンが不可欠になると語る。
   
 このほか本書は、スマートシティやスマートグリッド、復元性のあるサプライチェーンなどの構築プロジェクト、循環型経済(サークラーエコノミー)、トークンエコノミーにもページを割く。ブロックチェーン利用の最新事情をざっくり知るには十分な内容に仕上がっている。欧州や中国、台湾などの情報も貴重である。
   
 本書を読むとブロックチェーンプロジェクトで重要なのは、技術的ではなく、社会をデザインする構築力であることがよく分かる。筆者は「互酬的な信頼関係と人間中心デザインによるコミュニティ形成がブロックチェーン社会のエッセンス」と語る。

書籍情報

モビリティ・エコノミクス〜ブロックチェーンが拓く新たな経済圏〜

深尾三四郎、クリス・バリンジャー、日本経済新聞出版、p.344、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。