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横田英史の読書コーナー

オンライン・ファースト〜コロナ禍で進展した情報社会を元に戻さないために〜

東京大学情報理工学系研究科、東京大学出版会

2021.1.15  2:38 pm

 副題の「コロナ禍で進展した情報社会を元に戻さないために」に期待して購入。東京大学情報理工学系研究科の教授が、オムニバス形式で自らの研究を紹介した書。ウイズコロナ時代やポストコロナ時代に役立ちそうな研究もあるが、コロナとの関係性が明確でなかったり、既存研究との違いや新規性、革新性が伝わってこない研究も含まれており玉石混交の印象が強い。東大の情報理工学系の研究内容をざっと知るのは良いかもしれない。「役に立たない研究が役に立つ」という言葉もある。頑張って頂きたい。
   
 本書は大きく2部構成をとり、巻末には「ポストコロナの新たな情報化社会へ向けての提言」を掲げる。巻末の冒頭は的確な指摘を掲げておりなかなか読ませる。第1部の「これからの社会とIT」では全体像を示し、第2部の「ITでデザインするポストコロナ社会」では個別の研究を明らかにする。
   
 第1部では、江崎浩の「インターネットのしくみでつくる社会〜つながりによる革新〜」がユニークな視点を提供しており読み応えがある。第2部では、非接触インターフェース(VR)、データサイエンスに基づくソーシャルディスタンス確保、個人情報の分散管理、テレワークなどをカバーしている。

書籍情報

オンライン・ファースト〜コロナ禍で進展した情報社会を元に戻さないために〜

東京大学情報理工学系研究科、東京大学出版会、p.280、¥2970

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。