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横田英史の読書コーナー

1491〜先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見〜

チャールズ・C. マン、布施由紀子・訳、日本放送出版協会

2021.1.31  2:45 pm

 コロンブス上陸以前の南北アメリカ大国の文化、文明、民族、建築、生態系などについて、最新の研究成果を駆使して紹介した書。コロンブス上陸以前の先住民は、手付かずの自然に囲まれ、太古の昔と変わらぬ生活を営んでいたに違いないという固定観念を覆される。いかに西欧の視点から見た歴史観に染まっているかがよく分かる。すごく刺激的で、考古学好き・歴史好きには強くお薦めできる書である。
   
 驚くのは先住民たちの技術力の高さ。いくつかの都市は、同時代の欧州をしのぐ人口を抱えており、水道や植物園など栄華を誇っていた。メキシコの先住民はトウモロコシの交配を繰り返し、現在の品種を作り上げた。熱帯雨林を破壊せずに農業を営んだ耕作技術もすごい。現在をある意味上回っていたとも言える。組み紐のような3次元で表現された文字の話も面白い。興味深い話が満載です。
   
 筆者は科学ジャーナリストで、小難しさがない書き口は共感がもてる。600ページを超える大著だが、全く飽きることはない。ワクワクしながらページをめくることになる。筆者には、東半球と西半球の間の植物、動物、食物、病気などの交換(いわゆるコロンブス交換)を扱った名著「1493――世界を変えた大陸間の「交換」」もある。併せて読むのがお薦めだ。ただし本書はなぜか絶版になっている。Amazonでも、中古品が刊行当時よりも高値で売買されている。復刻を望みたい。

書籍情報

1491〜先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見〜

チャールズ・C. マン、布施由紀子・訳、日本放送出版協会、p.715、¥3200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。