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横田英史の読書コーナー

科学とはなにか〜新しい科学論、いま必要な三つの視点〜

ブルーバックス、佐倉統

2021.2.10  10:37 am

 尊大な専門家主義と傲慢な反知性主義のあいだで、社会は科学技術をどのように飼いならすべきかについて論じた書。霊長類研究者から転じた筆者が、進化論の観点から科学技術と社会との接点を考察する。「科学とはどのような存在か、誰のためのものか、社会に役に立つとは何か」といった切り口から、科学の歴史と今後について語る。
   
 日本の科学技術の在り方についての論考は的を射ている。筆者は3つの論点を挙げる。第1は一般社会のための科学をどのようにデザインするか、第2は匠の技術や職人芸とどのように折り合いをつけるか、第3は自然と生命との親近感が、人と人工物の関係にどう影響するか、である。
   
 筆者は日本の強みの生かし方について以下のように述べる。日常生活に密着した科学技術と日本が得意な細部の管理を結びつけて活性化するのが、科学技術界と日本の産業にとって良い方向とする。科学・技術の拡大による弊害や使いこなし方への配慮が求められる時代において、考えさせられることの多い書である。

書籍情報

科学とはなにか〜新しい科学論、いま必要な三つの視点〜

ブルーバックス、佐倉統、p.272、¥1100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。