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横田英史の読書コーナー

リ・イノベーション 視点転換の経営〜知識・資源の再起動〜

米山茂美、日本経済新聞出版

2021.2.20  10:43 am

 イノベーションを生むための方法論をケーススタディとともに論じたビジネス書。既存の知識やリソース(資源)を異なった視点から見直すことがイノベーションにつながるとする。そのための手段として、オープンイノベーショやグローバリゼーション、ダイバーシティ、ユーザーとの共創などを活用する。ケーススタディでは、マレーシアで売り出そうとしたシャープの事例が興味深い。販売不振の空気清浄機だったが、蚊をおびき寄せる機能を付加して、デング熱対策に悩むマレーシアでのヒットに結びつけたという。
   
 筆者は、「ほとんどの会社の収益源は既存の知識や眠る資源(技術など)・製品を読み替えるリ・イノベーションから生まれていると主張する。キヤノンのインクジェットや大塚製薬のポカリスエット、任天堂のWiiなどを例に挙げる。既存のリソースを読み替えるという著者の主張は悪くないが、目からうろこといった驚きはさほど感じない。タイトルの「リ・イノベーション」はキャッチーだが、そもそもイノベーションを生むのに難渋しているのに「Reとは?」といった気もする。
   
 残念なのは、謝辞で埋められた「まえがき」である。いきなり感謝では読む勢いが削がれてしまう。なぜこの位置に置いたのか編集者の意図が分からない。

書籍情報

リ・イノベーション 視点転換の経営〜知識・資源の再起動〜

米山茂美、日本経済新聞出版、p.288、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。