横田英史の読書コーナー
主権者のいない国
白井聡、講談社
2021.5.17 2:22 pm
好みがハッキリ分かれる書。嫌いな人は冒頭の10ページを読んだだけで放り出すのは間違いない。最初の10ページに耐えられた人は、「我が意を得たり」と読む進むことになりそうだ。冒頭は、「構成・正義の破壊」「知性なき強権政治」など、安倍政権と安倍個人への攻撃で始まる。一方で、国民はなぜ支持を続け、長期政権に至ったのかと疑問を呈する。
筆者は、「なぜ私たちは、決して主権者であろうとしないのか」と読者に問いかけ、「私たちが主権者でないならば、政府がロクでもないものであっても、私たちには何の責任もない」と議論を展開する。筆者は、太平洋戦争の敗北を「敗戦」と言わず「終戦」と称し続けるところに着目する。結局、日本人は太平洋戦争に敗北したことを認めていない。戦前の国家体制の在り方を否定しているようで、実は反省も否定もしていないと断じる。
日本は結局のところ、敗戦を正面から受け止めず、ダラダラと負け続ける「永続敗戦」に陥っているとする。無責任の体系に対して後悔と反省をしていない結果が、太平洋戦争の敗戦、バブル崩壊による経済敗戦、さらには医療崩壊によるコロナ敗戦と負け続ける背景にある。「失われた10年」とか「失われた30年」といった物言いとも通底する。どう考えても、「失った10年」であり、「失った30年」だと思うのだが。
書籍情報
主権者のいない国
白井聡、講談社、p.322、¥1870

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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