横田英史の読書コーナー
人工知能のアーキテクトたち〜AIを築き上げた人々が語るその真実〜
マーチン・フォード、松尾豊・監修、水原文 ・訳、オライリージャパン
2021.6.20 2:38 pm
AIの最前線に立つ23人の研究者・起業家へのインタビューを集めた書。ジェフリー・ヒントン、ヨシュア・ベンジオ、ヤン・ルカン、レイ・カーツワイル、ロドニー・ブルクス、ジェフリー・ディーンなど、これ以上はないと思える面子が勢揃いしている。日本人が登場しないのは、影の薄い現状を考えると致し方ないが、やはり残念である。650ページを超える大著にたじろぐが、エキサイティングな上に非常に読みやすい。AIの過去、現在、今後を知ることができる良書で、時間とお金を使って読み通す価値がある。
インタビュアーは、「ロボットの脅威、人の仕事がなくなる日」(日本経済新聞社)を著した未来学者。高い見識を背景にして時に鋭いツッコミを入れる。インタビュイーとのやり取りの緊張感は本書の読みどころの一つである。一家言ある研究者たちの哲学や歴史観、人生観をうまく引き出している。よくある「●●の100人」といった緊張感に欠ける企画とは一線を画す。
筆者は全員にほぼ同じ質問を投げかける。汎用人工知能(AGI)は可能か、可能とすればいつ誕生するか、AIにおける次のブレークスルーは何か、AIのリスクは何か、規制の必要性、中国は脅威か、ユニバーサルベーシックインカムの是非、などである。回答は多様で興味深い。ちなみに研究者たちが予測するAGIの実現時期は2029年〜2200年までと幅広い。
本書を読むと、AI研究が壁にぶち当たっている気持ちにさせられる。「近ごろのニュースとして報じられているものは、概念のブレークスルーではなく単なるデモ」「チープなハックにすぎない」「発展しているようで、ブレーク
書籍情報
人工知能のアーキテクトたち〜AIを築き上げた人々が語るその真実〜
マーチン・フォード、松尾豊・監修、水原文 ・訳、オライリージャパン、p.680、¥3520