横田英史の読書コーナー
次世代モビリティの経済学〜マーケットデザインによる制度設計〜
高原勇、栗野盛光、日本経済新聞出版
2021.8.14 6:45 pm
次世代モビリティの便益を経済学的に分析し、需要と供給のバランスがとれた市場をどのように設計すべきかを論じた書。次世代モビリティを設計する場合に考慮すべき点を幅広く取り上げており、議論のベースとして使うには悪くない。仕事で次世代モビリティに関わる方にとって、読んでおいて損のない書である。
本書は次世代モビリティとは何か、どのようなサービスがあるかなどを論じた後、ゲーム理論やモニタリング選択理論、マッチング理論などを使って市場を設計する上でのポイントを解説する。市場は、効率性、公平性、インセンティブに留意して設計することが肝要と説く。データの利活用やスマートシティとの関連など、Society5.0を強く意識しているところも本書の特徴である。
土木工学科出身の経済学者と自動車エンジニアによる共著ということもあって、技術的なポイントはきっちりと押さえている。ただし、途中で馴染みのない数式が登場するなど読みやすいとは言い難い点は要注意である。
書籍情報
次世代モビリティの経済学〜マーケットデザインによる制度設計〜
高原勇、栗野盛光、日本経済新聞出版、p.240、¥2970
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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